おせちを入れるお重には1段のものから3段重ねのものまであります。おせちとして必ず用意したいのは、壱の重に入れる祝い肴です。取り口と呼ばれることもありますが、この段には「三つ肴」というおめでたい数の子や黒豆・田作り・叩きごぼうを詰めて行きます。数の子は子孫繁栄とにしんの子供であるので「二親健在」を意味し黒豆は健康に過ごして働けるように、そして田作りはにぼしが田んぼの肥料として使われていたことから「五万米」といって豊作を祈願しています。
叩きごぼうはごぼうのように深く根を張って家が長く続いて行く様に、叩いて割ることで開運を願います。そのほかにも余白に紅白の蒲鉾や伊達巻・昆布巻き・栗きんとん・ちょろぎ・錦たまごなどが彩り良く詰められます。昆布巻きは喜ぶに掛けて、栗きんとんは勝ち栗や黄金色が縁起良いため蓄財にも繋がっています。ちょろぎは赤く染められた植物で、「長老喜」や「千世呂木」と書いて長寿を祝う食材です。
弐の重には焼き物を入れ、三の重には煮物が詰められます。焼き物は縁起の良い海の物を中心にブリや鯛・エビなどを使っていきます。ブリは成長するごとに名前が変化する出世魚で、鯛は名前の通りおめでたい肴としてお祝いの膳には欠かせない食材とされています。三の重にはレンコンやくわい八つ頭などの山の幸を使った煮物を入れ、さらにおせち料理の四の重には酢の物を五の重があるならば神様から授かった福を入れるために空にして置くか家族の好きな物を入れる場合があります。